『Nonベクレル食堂』

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大阪から東北への帰り道。僕はあるお店にどうしても寄ってみたかった。
それは京都の「Nonベクレル食堂」。3日前にオープンしたばかりで、食材のすべての放射線量を計り、安全な食べ物を出しているという。その真剣な取り組みとメッセージに、どうしても立ち寄ってから帰りたいと思っていた。

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お店は2Fにあり、バイオディーゼルカーをとめて、階段をのぼりドアを開けると...「いらっしゃいませ」。あれ!? カウンターに知った顔があった。「...もしかして、ロクローさん!?」「はい、ロクローです...あっ周生さん!」 なんとロクローさんじゃないか! 彼がこのお店をオープンしていたとは! そうかそうか。なんだかほっとしたような、また出会えた可笑しさのようなものがこみあげた。

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ロクローさんと初めて会ったのは2009年(だったかな)の旅の途中だけど、じつはもっと古くから繋がるような接点があって、折に触れてご縁を感じる友人だ。

今から15年くらい前のこと。彼は北米に渡りネイティブアメリカンを訪ね、映画「ホピの予言」の製作を手伝う中、ウラン鉱山で働くネイティブアメリカンの悲惨な状況を目の当たりする・・・。ちょうど同じ頃、僕もネイティブアメリカンを毎年のように訪ね、彼らの話を聞き、旅を共にしていたのだった。彼と現地で会うことはなかったけれど、3年前バイオディーゼルカーで日本一周中に出会って色々話しをしているうちに、共通点が沢山あることにビックリ、もう古くからの友人のよう思えてきて、どこかで糸と糸が繋がった、そんな感覚がしたのを覚えている。

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シンプルで落ち着いた雰囲気の「Nonベクレル食堂」の店内。その片隅に、測定器は置いてあった。大きさはちょっとした消化器ほどで、カウンターの下におさまるくらい。すぐ隣のPCに繋がっていて、この時も計測を続けていた。調味料にいたるまで、お店の食材はすべてこの測定器で計って、放射能汚染のない食材のみ使用している。

「今日までで約90種の食材を測定しています。今お店で使っているのはその内の70種くらい。計るだけでもう3週間くらいかかってます。例えば1kgで計れれば30分で計測できる。つめては計って、その間に次の食材を切ってつぶして......って工場で働いているみたいな日々でした(笑)でも食材が軽くなると計測時間が長くなるんです。質量のないローリエとかオレガノなんかは、なんぼつめても150gとかで、計るのも1日がかりで。」食材は季節折々、同じ食材でも成育場所も変わる。そのたびにコツコツと計測を続けるのだ。

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注文した定食が運ばれてくると...見た目も香りもバランスよく美味しそうだ。食材選びから愛情をこめて、お母さんが作ったようなアットホームなメニュー。「米はうちで育てたものなんですよ」とロクローさん。もちろん「大盛りで!」

ひと口、ふた口と食べる......うん美味い! 優しい味付けにホッとする。
ふとハッとした。こうやって「絶対に安心な食べ物なんだ」って感じながらご飯を食べるのは、震災後ほとんどなかった。いつも「たぶん大丈夫な食材だろう」と思いながら食べていた。いつしかそれが普通の状態なっていた。でも違う、この安心感が当たり前のはずなんだ。

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店内には小さなお子さん連れのご家族やお友達同士。それぞれに食事を楽しむ笑い声が響いていた。お父さんもお母さんも、子どもたちにとって心配しなくていいご飯がここにある。


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ロクローさんは中学生と小学生の2人の子どものお父さんだ。そもそもの始まりは、3.11の後の子どもの学校給食からだった。給食への配慮に対して、学校や行政へ質問状を送るも納得のいく回答がほとんど得られず、自分の足で正しい知識を集め、専門家に聞き、各地の測定所を回ったりボランティア測定員をしたりと行動を始めたという。
「この京都市内には8000人の避難者がいると言われます。数えられていない方も含めればもっといるでしょう。外食へ行った時に、ちょっとでも不安を感じる食材があると、お母さんたちは小声で "残しなさいよ" って子どもに言うんです。もうこれ以上、子どもには一切セシウム入れたくないんですよ。それこそ産地だけじゃ汚染はわからないのに、もうすごいガチガチにしていて、栄養障害も出てきているんです。そういうことがほんとうに辛いなって思って。何も気にせんと、おいしいおいしいってご飯食べられる定食屋がやりたかったんです」

さらに彼が目指すのは、安心安全な食事だけではない。この定食屋から正しい情報を発信することで、無差別に攻撃をうけている作り手を応援したいのだ。彼は今まで汚染された土地や風評被害にあう農家さんを周り、丹精こめて育ててきた大地と作物を諦めざるを得なかった農家さんの想いや現状にふれてきた。
「消費者さんの中には、東日本から向こうのものは一切買わないという人もいるんです。そういう無差別なものではなく、被災地でもハウスのものだったり、数値が出ていない安全なものはたくさんあるんですよ。それこそ風評被害を受けているんです。そういった農家さんの作物の測定結果と農家さんの情報をHPにアップして、直接買うことのできるシステムが作れればと思うんです。11月からは食材持ち込みの測定も受ける予定です。本当に必要なことをちゃんとしなきゃいけない。そこをうやむやにするから風評被害が生まれるわけやし。本当にちゃんと食べられるものがたくさんあるわけだから、それをちゃんと紹介したい」

農家さんや食材についての詳しい情報は今後、HP上で順次アップしていくそうだが、開店して3日目。すでに "食材はどこで買えるの?"という問い合わせも受けている。お店に来られない人々が情報を求めているのだ。全く知らない人が "このお店なんですか?"と入ってくることもあるという。
「こういう動きが大きくなっていったら変わると思う」ロクローさんは続けた。

「......僕はネイティブアメリカンの人々と暮らした時に、何も知らされずにウランを掘り、そこに住んで被ばくしている先住民の人々を見てきました。本当にひどい状況だったんです......仮に原発が100%安全やったとしても、そういう犠牲のうえに僕らがあぐらかいて座って生きていて、そんなんぜったいアカンやろって。そう思って行動していたつもりなのに、3.11が起こった。僕が命かけたとこで原発がなくなったかどうかわからないけど、少なくとも、自分は命をかけてなかったから、自分の子に、全ての子に、次の世代に申し訳ないって思って。本当に必要なことをちゃんとしなきゃいけない。僕も生き方を変えていかなあかんなと思って。どうせやるなら直球勝負でやろうって」

お店の片隅にはホピの本やネイティブアメリカンのオブジェがそっと飾られていた。
彼の新しい人生がいよいよ始まったんだ、そんな気がした。

まだまだ話していたかったけど、忙しい彼を引き止めておくわけにいかない。
「また会おう。応援しているよ」固く握手をしてお店を後にした。

ロクローくん、遠くてなかなか来られないけれど、心から応援してるよ。
また会おう、その日を楽しみにしています。

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